管理部は「入力」に疲れている

管理部の方と話をすると、こんな声をよく聞きます。

「入力作業が、一番しんどいんです」

請求書の金額を入力する。契約情報を入力する。社員情報を入力する。 同じ情報を、複数のシステムに、何度も入力する。

入力は、ミスを生みます。 ミスは、責任を生みます。 責任は、精神的な負担になります。

誰も「入力したい」と思って入力しているわけではありません。 でも、入力しなければ仕事が回らない。 その構造自体が、管理部を疲弊させています。


入力は、生産性を上げない

ここで一度、立ち止まって考えてみてください。

入力という行為は、何かを生み出しているでしょうか。

入力は、すでに存在している情報を、別の場所に写しているだけです。 新しい価値は生まれていません。 にもかかわらず、時間はかかり、ミスのリスクは増え、精神的な負担だけが積み上がっていく。

入力作業が多い組織は、生産性が低いのではありません。 生産性を上げられない構造になっているのです。


すでに社内には、データがある

御社にも、こんなシステムがあるはずです。

  • Salesforceに顧客情報がある
  • freeeに取引先情報がある
  • クラウドサインに契約情報がある
  • 営業からの申請書に案件情報がある

これらのシステムには、すでに「正しい情報」が入っています。 誰かが一度、責任を持って入力した情報です。

では、なぜ管理部は、同じ情報をもう一度入力しなければならないのでしょうか。

答えは単純です。 システム同士がつながっていないからです。

新しいシステムを入れるたびに、入力項目が増える。 業務が増えるたびに、入力画面が増える。 その結果、人が「システムのために働く」状態になっている。

これは、本末転倒です。


私がやりたいのは「入力させない設計」

私がシステムを設計するとき、最初に考えることがあります。

「この入力は、本当に必要か」

すでにSalesforceにある情報なら、Salesforceから取得すればいい。 freeeにある情報なら、freeeを参照すればいい。 人に入力させる理由がないなら、入力欄は作らない。

そして、もう一つ大事にしていることがあります。

「マスタは1つにする」

同じ情報が複数の場所にあると、どれが正しいかわからなくなります。 更新されたかどうかも、確認が必要になります。 これが、混乱と手戻りの原因です。

マスタを1つに決める。 そのマスタを更新する責任者を、1人決める。 他の人は、そのデータを「見る」か「承認する」だけでいい。

全員が入力する必要はありません。 判断する人を1人決めて、あとは自動化する。

これが、私の設計思想です。


経営にとっての意味

この設計は、単なる効率化の話ではありません。 経営にとって、いくつかの重要な意味があります。

1. ミスが減る

入力が減れば、ミスは減ります。 ミスが減れば、修正作業も減ります。 修正作業が減れば、管理部はもっと重要な仕事に時間を使えます。

2. 責任が明確になる

「誰がこのデータを入れたのか」が曖昧な状態は、内部統制上のリスクです。 マスタを1つにして、更新者を1人にすれば、責任は自然と明確になります。 監査対応も、楽になります。

3. 引き継ぎが容易になる

「この業務は○○さんしかわからない」という状態は、組織のリスクです。 人が入力しなくていい設計にしておけば、引き継ぎの負担は最小限になります。 将来、人が入れ替わっても回る仕組みになります。

4. 組織が疲れない

入力作業は、見えにくい疲労を生みます。 「また同じことを入力するのか」という小さなストレスが、積み重なっていく。

入力を減らすことは、管理部の心理的安全性を高めることでもあります。 触らなくていい時間が長いほど、人は安心して働ける。


静かに回るシステムを

私は、派手な機能を作りたいわけではありません。 使いやすい画面を作ることが、目的でもありません。

目指しているのは、**「触らなくても回るシステム」**です。

入力画面を減らす。 自動連携を増やす。 人が判断すべきことだけを、人に残す。

その結果として、管理部の人たちが 「最近、入力作業が減った気がする」 と感じてくれたら、それが一番の成果です。


最後に

システムの仕事は、人に入力させることではありません。 人が入力しなくて済むようにすることです。

この考え方を持つエンジニアがいれば、 御社の管理部は、少しずつ楽になっていくはずです。

派手な変革ではなく、静かに、確実に。 業務が回り、人が疲れない仕組みを作る。

それが、私の仕事です。